
長崎県西部にある西海市で明治33年からお酢づくりをしている川添酢造さん。一つ一つの作業などにこだわりがあって、驚くことが多かったお酢屋さんです。取材時はご兄弟が熱く語ってくださいました。
こだわりは一つに絞れません。原料や水、麹づくり、熟成室…
取材時にこだわりをお聞きすると、どんどん出てくるのが川添酢造さんの特徴です。お話しながら実際に実物を見せていただきました。
まずは原料をチェック!

「商品によって使う原料が異なります。純米酢は九州産の五分搗き米とあいがも農法米を使った2種類があり、さらに玄米酢は滋賀で作られている完全無農薬の玄米を使っています。どれも通常の2倍くらいの米量を使っているので旨みたっぷりです。」と川添さん。まず産地も商品によってこだわられているのがこだわりポイント1つ目です。なぜなら米の収量は年によって変わり、特に不作の年は原料探しが大変になる可能性もあるため、産地を決めることはリスクを伴うのです。
次に、五分搗き米やあいがも農法米、完全無農薬玄米を使うところがこだわりポイント2つ目です。五分搗き米とは玄米と精白米の中間を言います。具体的には玄米の状態から精白を50%にして、旨みや栄養のある部分を全て取り除かないようにしています。通常の純米酢は100%精白された米を使用されることが多いです。しかし、深みのある味わいを醸すために五分搗き米にして、規格量以上の米量を使用して仕込んでいるのです。
あいがも農法米とは、あいがもを放育して稲作をする方法です。非効率・あいがものコストがかかる一方、農薬を使用せずに害虫駆除ができ、かつ、あいがもの排泄物が肥料になり化学肥料も不要になるため、環境に優しく人も安全・安心に食べられる自然の恵が詰まったお米が出来上がります。
完全無農薬玄米とは農薬を使用せずに作った玄米を言います。JAS法に定められた条件をクリアすると「オーガニック」と名乗れますが、実はオーガニック=無農薬ではありません。オーガニックとはいくつかの許可された農薬は使用しても良い、というルールから成り立っています。残留農薬の問題からオーガニック制度ができたと言われています。一方、完全無農薬は、農薬を使わずに作っている、という意味になります。
お酢に重要なのは原料だけではない!「水」のこだわりも影響大
「弊社ではダムではなく、その上にある岩瀬戸渓谷の川の水を使用してお酢造りを行っています。」そう語る、川添さん。「水」というと、そこまで意識されない方も多いかもしれませんが、味を左右する重要な存在です。特に素材に近い食品造りをされている塩や醤油、みりん、酒、豆腐などにおいても「水」は大切です。自然豊かな場所に存在する川添酢造さんだからこそ、自然の水を使用しているのがこだわりポイントの3つ目です。
もろぶた(麹蓋)を使用した麹づくり!手作りでお酢に適した最高の麹を造る

今やもろぶたを使用して機械を使わずに麹づくりをされている企業さんはいるのでしょうか?というくらい、本当に昔ながらの造り方を踏襲されている川添酢造さん。「ちょっと待っててくださいね。」と持ってきてくださった麹の入ったもろぶたを見た時には、ついつい驚きの声を上げてしまいました。麹づくりは基本的に2〜3時間おきに温度管理などが必要になる作業です。そのため、オートメーション化が進んでいるのですが…やはり人の手が加えられると聞くだけで美味しそうに感じてしまいます。このもろぶたの麹造りがこだわりポイント4つ目です。
<熟成室>音楽や床・壁、電圧と驚きの環境づくり!


こんなにもこだわりが?!と思うほどの環境づくりのある熟成室。足を踏み入れると、何かが聞こえてくる…と思ったらクラシックがかかっていました。さらに周りを見渡していると「何か配線がある?」と思ったら熟成中のお酢に関係する電圧の配線でした。す、すごいなこの部屋…と思っていたら「床と壁に炭も忍ばせているんです。」と川添さん。いや〜驚きいっぱいの部屋でした。一つ一つが美味しいお酢造りにつながる大切な環境づくりです。これらがこだわりポイント5つ目です。ここまでこだわって造られているお酢が美味しくない訳がないでしょう。
HPに記載されている通りの「昔ながらのお酢造り」

「昔ながらのお酢造り」といっても、企業さんによってどこまで昔ながらなのかは実は異なります。しかし、川添酢造さんの「昔ながらのお酢造り」は本当にそのままで、味わいを大切に守られていました。持ち帰っていただいた純米酢やあいがも農法の純米酢も、飲んだり料理に使ったりで大活躍しています。製造過程やこだわり、造り手の想いを知っているだけで、いつもの食卓がさらに温かくなるのも魅力的です。